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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(オ)141号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人渡辺御千夫の上告理由は末尾添附別紙記載の通りでありこれに対する当裁判所の判断は次ぎの如くである。

第一点に付て

所論の点に関する原審の見解は正しい。本件の様に県会議員選挙と市会議員選挙とが同時に行われた場合であると否とによつて区別する理由はない論旨は採用出来ない。

第二点に付て

選挙を無効とすること及びこれを再びやりなおすことの重大性に鑑みて法律は少しぐらい選挙の規定に違反した事実があつても、其為め選挙の結果に異動を及ぼす虞の無い限り、選挙を無効としないことにしたのである。本件において原審は選挙の規定に違反した事実が全然無かつたというのではない、あつたとしても原審の認定した様な善後措置によつて選挙の結果に異動を及ぼす虞はなかつたものと認めたのである。投票箱運送中に鍵が破損した為め投票が散乱した事実があつたとしても、それだけで直ちに選挙の公正が害されたということは出来ない。原審認定の様に近々五分内外の間に、後に発見された一票を除く他の全部が選挙係員のみの手によつて拾い集められてもとの通り投票箱に収められ、其間係員以外何人でも自由に手を触れることが出来る状態に置かれた様な選挙の公正を害した事実もなく、且拾い集められた数と右の一票及散乱せずに投票箱内に残つて居た投票の数を合せた数と実際の投票人員の数とが合致した以上、特に不正投票の混入其他選挙の公正を害する様な事実の認むべきものの無い限り(本件ではそういう事実は少しも認められて居ない)選挙の結果に異動を及ぼす虞は無かつたものと判定した原審の措置は違法ではない。従つて論旨は採用出来ない。(その他の判決理由は省略する。)

以上の如く論旨はいずれも理由がないから民事訴訟法第四〇一条第九五条第八九条に従つて主文の如く判決する。

以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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